2023年11月13日
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三百字小説『乱歩のランプ』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 「これが江戸川乱歩の使っていたランプです。このランプの光で怪人二十面相は書かれたのです」と詐欺師は言った。「どうです、お安くしておきますよ。買いませんか? 今ならたったの一千万円です」

 「嘘つけ。昭和11年なら、既に電灯が普及しているだろう」

 「あなたは何も分かっておられない」

 「どういう意味だ」

 「これは灯りを得るためのランプではないのです」

 「じゃあ何をするためのランプだ」

 「ランプの光を見ると、乱歩は自分が怪人二十面相の変装だった事実を思い出すのです。さあ、あなたもランプの光を見て自分の正体を思い出すのです」

(遠野秋彦・作 ©2023 TOHNO, Akihiko)

遠野秋彦